

平成21年1月27日〜2月1日、札幌市民ギャラリーで札幌大谷大学短期大学部美術科・専攻科による、第44回卒業+第42修了展を開催しました。美術科1年展と専攻科1年展も同時開催され、オリジナリティ溢れる作品が来場者の目を楽しませていました。
そこで展示された作品の一部を、ここで紹介します。
テーマ『絆』
若月 ゆりか さん (美術科油彩コース)

重なる二つの手のモデルは、私の祖父母です。以前、私が自分の手をモチーフにして絵を描いていることを話したときに、「自分たちの手も描いてほしい」と言われたことがきっかけで描き始めました。コンセプトは“夫婦の絆と愛”です。長年苦労を共にしてきた祖母の手を包む祖父の手を通して、守り支えあってきた夫婦の深いつながりを表現しました。
また、見ていただく方の記憶に残る作品にしたかったので、手にスポットライトが当たっているような浮かび上がるイメージを大切にしました。
油彩キャンパス F100テーマ『永続生成』
松苗 京子 さん (美術科総合芸術コース)

現代はさまざまな情報が溢れており、人は常に外から何がしかの刺激を受けています。そうした情報を整理する中で新しいアイデアが生まれると考えれば、モノづくりと外からの刺激は切っても切れない関係にあると言えます。そうした自分と外界との関係性を表現したいと考え、この作品を制作しました。
大きな顔が自分を、小さな人が刺激を表しているのですが、小さな人それぞれに個性と躍動感を持たせること、電球を使うことで閃きをイメージさせ、抽象的に表現することにこだわりました。
石膏、電球、他 H120×W95×160L cm テーマ『華』
加藤 まい さん (美術科デザインコース)

“世の人々の生活に華を”をコンセプトに、家具である屏風の形式をとることで、人々の生活に直接関わることのできる作品に仕上げました。Saiというペイントツールでイラストを描き、フォトショップでまとめていたのですが、紫やブルー、ピンクの組み合わせの美しさを追求しました。モチーフは「花鳥風月」の花と鳥のイメージで、装飾的で華やかな空間を描きました。
例えば自分の部屋に生花を飾ったときのような、心が美しいものに対面した感動を、この作品に関わった人に贈りたいです。
CGイラストレーション H145×W45cm 3セットテーマ『みえなかったもの』
杉村 有理 さん (専攻科美術専攻油彩コース)

修了展ではこの『みえなかったもの』と、『さわぎだすいのち』の2点を出展しています。本科、専攻科と油彩では自画像を描くことが多かったのですが、今回は自分の内面を表現することをコンセプトに、初めての抽象画にチャレンジしました。思うままに筆を動かすだけでは形にならないので、ただ色を重ねるのではなく、絵として美しく仕上がるよう心がけました。
4年の間ずっと、自分にしか描けない絵を描きたいと思ってきたので、最後に自分らしい表現方法に出会えて良かったです。
油彩キャンパス F100テーマ『しずかなことばたち』
細野 更紗 さん (専攻科美術専攻総合芸術コース)

今回は大谷で学んだ4年間の集大成として、自分の思い出が溢れる作品にすることを目的に制作しました。ベースは木版画で35種類を15枚ずつ刷り、その中から選んだ約500枚を組み合わせています。一枚ごとに意味が違う版画のイメージが、自分から出てくる瞬間をつなぎとめておくという意味を込めて、虫ピンを使いました。
彫って刷ってを繰り返しながら版画を作っていく中で、自分の気持ちを整理したり、やりたいこと、考えていることを表現することができたように思います。
木版画、ケント紙 ca 150×250cmテーマ『L’altare』
廣瀬 明子 さん (専攻科美術専攻デザインコース)

テーマ「L’altare」は、イタリア語で「祭壇」という意味です。私は無宗教ですが、キリスト教に限らず、ヒンズー教やチベット仏教など、さまざまな寺院の装飾に興味があったので、“オリジナルの宗教の祭壇”をコンセプトに作品をつくりました。作品の主であるイラストは神様と聖獣と植物を表しており、象や羊、鷺、カエル、猫、カメレオン、牛など異なるモチーフをいくつも盛り込んでいます。
合わせて枠や布の刺繍にいたるまで、そのすべてが調和して、同じ世界観で統一されるよう配慮しました。
木製パネル、出力紙、他卒業・修了制作展に寄せて
美術科科長
鈴木 正實 教授

近代美術は何を描くかということよりも、どう描くかということに力点が置かれてきた。こういう話をすると、ほとんどの学生は怪訝な顔をする。学生たちにとってシュジェ(主題)は掌中の玉のようなものであり、どうやらフォルム(形式)に優先するらしい。そこで具体例をあげ方向転換をはかる。美術史上にはあまり出てこないが、何を描くかにこだわった作家もいる。それでもまだ不安げである。
卒業・修了制作展が近づくたびに、私は制作に向かう学生たちの背中に孤独を感じる。自己実現をはかっているときは、だれもが独力で自分のイメージと対峙しなければならない。それはまた創造行為を通してしか味わえない充実した孤独なのだ。眒吟、希望、挫折、意地…。こうした心情がないまぜになった空気が制作現場に濃厚に立ちこめ、また巣立ちの時期が来たことを知らされる。かくして生まれたのが今回の出来作のそれぞれなのである。
ところで「やまと絵」は中国の事物を描いた「唐絵」から発し、日本の事物を描くことで成立した。そこにかの源氏物語絵巻があり、浮世絵のひとつのルーツがある。つまり主題の相違は、おのずから画風の相違を生みだし、ついには日本独自の絵画領域を意味するものにまで発展した。これからは、我が日本美術にも例をとってシュジェとフォルムについて学生たちに話そうと思っている。