

平成21年7月4日〜5日、札幌大谷大学音楽学部音楽学科で音楽療法を選択している学生たちが、地域とのふれあいの中で音楽の技能を高め、豊かな感性と文化を尊重する態度を育てることを目的に、黒松内町で音楽療法研修・地域コンサートを行いました。
学生たちが音楽療法班、コンサート・レッスン班に分かれてそれぞれ準備を進め、セッションやコンサート、中学生へのレッスンなどを実践した様子を紹介します。

音楽療法とは音楽鑑賞や合唱、リズム体操などを通して心身を活発化させ、楽しみながらリハビリテーションや健康維持、老化遅延を目指すものです。学生たちはグループに分かれ、プログラムの目的や内容について話し合い、セッションを実践しました。

(北海道大学医療短大部卒・北見北斗高校出身)
介護老人保健施設でのセッションだったので、プログラムを作成するにあたっては、リハビリテーションの要素を多く盛り込むよう配慮しました。当日訪れて初めて、参加者が70〜80名いることや、車イスの方が多いことを知り、予定したプログラムに添いつつも座りながらできる動きに変更するなど、臨機応変な対応ができたと思います。大人数だったので、全体を見ながらの進行は難しかったですが、スタッフの方やメンバーが参加者の間に入ってフォローしてくれたので、とても助かりました。事前に綿密な打ち合わせを行い、一人ひとりが自分の役割や動きを理解する重要さを再認識する、良い機会になったと思います。
何がはじまるのか不安な様子の中、季節のお話から「浜辺の歌」を歌いました。大きく呼吸をしながら楽しそうな笑顔が見られました。鑑賞ではオーボエ独奏で「蘇州夜曲」と「ゴンドラの歌」の演奏があり、最後に「夕焼けこやけ」を隣同士で手をつないで歌いました。

(札幌藻岩高校出身)
私たちはプログラムを作成する際、高齢者を想定していました。でも、実際にはもっと若い方たちばかりで…。身体活動を中心に構成を考えていたので、若い方でも、自分で歌えない方が多くても、準備したプログラムで進行することができましたが、施設について事前に調べるべきだったと反省しています。それでも「みかんの花咲く丘」の歌を、テンポを変えて歌いながらリズム打ちしたときには、参加者の方から「もう1回やって!」とリクエストがかかるほど盛り上がったし、ファゴットの生演奏の際には歓声が上がるなど、充実したセッションになりました。想定外の事態にも慌てず対処できたことで、自信がつきました。
身体活動では「みかんの花咲く丘」を参加者全員で歌った後、二人一組で手遊びを行いました。セラピストやアシスタントが声をかけたり、一緒に手遊びを行ったことで、参加者のみなさんも楽しんで参加してくれました。

(恵庭北高校出身)
僕たちのグループは、音楽を通じてコミュニケーションを図ることを目的にセッションを行いました。児童の参加が多かったので、人気アニメの主題歌にのせて、簡単で大きな動きのリズム遊びをしたのですが、予想以上に盛り上がり、中には前に出て踊りだす子どももいたほど。盛り上がりすぎてパニックにならないように、波の音がするオーシャンドラムを使って場を静めるなど配慮しました。また、場が盛り上がるのは嬉しいことなのですが、セッションには制限時間があるので、全体の流れと時間配分のバランスを取りながら、どこでストップをかけるかを判断するのが難しかったですね。とても勉強になりました。
はじめに、コミュニケーションをとることを目的に「握手でこんにちは」をみんなで歌い、歩きました。多くの利用者さんと関わりを持つことができ、楽しいひと時でした。鑑賞では「夏の思い出」を二重唱で聞いていただきました。その後、身体活動でソーラン節を歌ったり、指の運動、上肢の運動、音楽クイズなど楽しい時間を過ごしました。
音楽療法は、音楽の力を借りて少しでも安らげるように、心身の機能回復のために、高齢者がいつまでも元気でいるためになど、さまざまな活用方法があり、多様な分野で期待が高まっています。音楽療法を太い幹に例えると、医療・心理・福祉・教育など多くに学びに枝分かれをしています。誰もが音楽を聴いて慰められたり、昔を思い出したり、勇気づけられたことがあると思うのですが、学生たちはこの音楽の不思議な力を信じて、多くを学び、音楽療法士を目指しています。今回の実践で音楽療法班は、4・3年生が主セラピストを務め、2年生がピアノ伴奏を担当するなど、チームワーク良くプログラムを進めていました。実際にセッションを行うことで、対象となる人のニーズや能力に応じた音楽活動とは何かをあらためて考え、今後の課題を確認する良い機会にもなったはずです。学生たちには、こうした大学では学ぶことのできない貴重な体験から、音楽を通した人との関わり方や、人に伝える表現力を学んでほしいと思います。

地域貢献の一環として、音楽を通して多くの方とコミュニケーションをはかることが、地域コンサートの目的の一つ。管打楽器コースのメンバーで構成されたコンサートグループは、1日目は2回のコンサートを、2日目は生徒への楽器指導を行いました。

(北海道羽幌高校出身)
昨年も地域コンサートに参加していますが、今年はリーダーだったこともあり、先生との打ち合わせや事務手続きなど裏方仕事も多く、準備期間は忙しかったです。メンバーの大半が後輩だったこともあり、練習のときには全員と1回は話す、本番前に緊張している人には声をかけるなど、自分から積極的にコミュニケーションをはかるように心がけました。道の駅黒松内と開正寺の2カ所でコンサートを行いましたが、お客様から歓声や拍手をいただき、とても嬉しかったです。中でも、私たちが演奏する「ふるさと」に合わせて、お客様が大合唱してくださったことが印象的でした。足を運んでくださったみなさんに、感謝です。
来場者の年齢層が幅広い、開正寺でのライトアップコンサートでは、ジブリの映画音楽から演歌、童謡までいろいろなジャンルの曲を演奏。演奏と音楽療法履修生の踊りとのコラボレーションもあり、大いに盛り上がりました。

(宮城県泉高校出身)
僕は、吹奏楽部でサックスパートを担当する3名の指導を担当しました。リードのメンテナンス方法や交換のタイミングといった楽器の扱い方を教えたり、持参した基本の教則本に則ってロングトーンの練習をしましたが、その楽器を専門とする人にしかわからない話をするように心がけたので、3名とも真剣に僕の話を聞いてくれました。中学生たちは技巧や音色はまだまだでしたが、その演奏から“サックスを吹くのが楽しくて仕方がない”という気持ちがストレートに伝わってきて…。音楽を専門に学ぶうちに、自分が忘れかけていた初心を思い出させてくれました。また機会があったら、ぜひ参加したいと思います。
黒松内中学校バンドクリニックでは、管弦打楽器コースの学生がそれぞれ楽器指導を行いました。中学校のコンクールが間近だったので、パートごとにハーモニーやバランスを見ながら指導し、さらなるレベルアップを目指しました。
地域コンサート班は、4日に黒松内道の駅と開正寺で地域コンサートを、5日に黒松内中学校吹奏楽部でバンドクリニックを行いました。管弦打楽器コースの学生を中心にした11名が演奏しましたが、楽曲の選択や編曲作業も学生たちが協力して行い、学年の違うメンバーが集まって入念なリハーサルを繰り返した結果、今年も大変素晴らしいコンサートにすることができました。黒松内道の駅には年配の観光客の方が多く、開正寺は子どもからお年寄りまで多くの町民の方が足を運んでくださったため、プログラムを一 部変更して演奏しましたが、たくさんの拍手をいただき、学生たちも大きな達成感を感じることができたようです。また、黒松内中学校吹奏楽部の生徒たちに、楽器別にトレーニング方法やコンサートに向けての心構えを2時間にわたり指導した際には、「教えるとは」「学ぶとは」どういうことかを深く学習できたと思います。この機会に、学生たちが演奏する楽しさだけでなく、音楽を通して人とコミュニケーションする喜びを感じてくれたら嬉しいです。