札幌大谷大学短期大学部・保育科「グループ実習」/2009年6月11日

実習で学ぶ保育の奥深さ

グループ実習とは

保育科2年生の授業の一環として、附属幼稚園において前期3回後期2回実施しています。1年生の時は観察のみですが、2年生になるとローテーションで各クラスに1人で入り、担任の補助的役割で保育に参加します。7〜8人のグループに分かれて行われる「グループ実習」は、この参加実習での情報を活かし、普段の子ども達の様子から発達を考慮し、チーム指導だからこそできる自主性を尊重した遊びを提案していく活動です。グループ制作だからこそできる新しい環境づくりや、友だちの意外な発想や才能に気づくなどの経験もしています。取り組んでいる活動が、子どもにとってどんな意味があるのか、どんな風に楽しめるのか、子どもたちの姿をイメージしながら充分討議し、指導計画を作り、実践し、振り返り、今後の実践に活かす意欲につなげます。また保育にとってとても重要な「チームワーク」について学ぶたいへんよい機会です。
「グループ実習」当日の内容やそれまでの準備過程を紹介します。


年長:お話の世界に入ろう 〜11ぴきのねこ〜

ゆり組

子どもたちが絵本『11ぴきのねこ』をアレンジした物語の世界を楽しむ、“ごっこ遊び”を実践。子どもたちは猫になりきるためにお面を作り、3つのグループに分かれて小さな魚釣りを楽しんだ後、ヒントに基づいて大きな魚がいる場所を探し、みんなで協力して大きなお魚を捕まえました。

子どもたちは2本の釣り竿を貸し借りしながら、小さな魚を釣り上げました。

みんなで捕まえた大きな魚を、おへやに運びました。子どもたちも得意げです。

子どもたちの行動が予想より速く、
予定時間より早く終了し戸惑いました。

私たちは子どもたちには個性があり、それぞれに楽しみ方が違うことを考慮して、一人ずつ小さな魚を釣る場面と、みんなで協力して大きな魚を捕まえるという、2つの場面を用意しました。大きな魚を見つけるためのヒント探しも、捕まえるための相談や行動も、予想していたよりずっと速くできてしまい、設定保育の時間が余ってしまいました。その場は絵本を読んで乗り切りましたが、時間が余るとは思っていなかったので、最後まで子どもたちが楽しめるよう、あらゆる想定のもとで準備を進めなければと思いました。

高橋 侑希さん
高橋 侑希さん

(札幌新川高校出身)

あじさい組

絵本『11ぴきのねこ』の物語に添った“ごっこ遊び”を実践しました。3つのグループに分かれて、猫になりきった子どもたちはみんなで協力しながら段ボールの舟を漕ぎ、力を合わせて逃げ回る大きな魚を捕まえたのですが、猫たちはがまんできずそれを食べてしまいます。そこで、魚を待っているおじいさん猫のために、小さな魚を捕りに行きました。

実習生が用意したねこ耳をつけて、ねこに変身した子どもたちは大はしゃぎでした。

じゃんけんで勝ったチームから、順番に大きな魚を食べ始めました。

ホールでの保育は難しかったけれど、
7人の協力で声がけはうまくできました。

朝の自由遊びのときから、子どもたちと一緒に用意した魚に色を塗るなど、設定保育に期待感を持たせるよう配慮しました。子どもたちはすぐに物語の世界に入り込んでくれましたが、ホールで大きく動きながらの保育だったこともあり、盛り上がりすぎてケンカが始まりそうになったり、説明を聞いてもらえない場面もありました。ですが7人のグループだったので、それぞれが声がけをすることで、遊びに集中する環境が作れたと思います。準備は大変でしたが、子どもたちの喜ぶ顔を見ることができて本当に嬉しかったです。

保田 絵美さん
保田 絵美さん

(札幌月寒高校出身)

年中:手作り楽器

さくら組

楽器を欲しがっている動物さんたちのために、子どもたちが楽器屋さんに変身。カップやトレー、ペットボトル、ストローなど子どもたちの身近にあるものを使って、カスタネット、たいこ、マラカス、ギロという4種類の楽器を作りました。その後、作った楽器を使って合奏を楽しみました。

ラッコのカチカチチームは、カスタネット作りに挑戦。模様に個性が表れました。

たぬきのトントンチームが作ったのはたいこ。歌に合わせて叩いてみました。

日案の流れを全員が理解していたから
連携しながら保育を実践できました。

子どもたちが出来上がりの楽器をイメージしながら楽しんで取り組めるように、動物を登場させて楽器屋さんに変身させるなど、ごっこ遊びの要素も取り入れました。4歳児が作れそうで、興味をそそる楽器の種類と作り方・材料を考え、グループ全員で何度も試作し、知恵をしぼり、4種類を作ることにしましたが、難易度や制作にかかる時間はバラバラ。そこで簡単なものは大人数のグループ、手がかかるものは少人数のグループで制作し、テーブルごとの配置人数も考慮しました。子どもたちの予想外の反応に戸惑うこともありましたが、全員が日案の流れを理解し臨機応変に対応したので、スムーズに進行できたと思います。

阪内 彩乃さん
阪内 彩乃さん

(札幌北陵高校出身)

たんぽぽ組

実習生が手作り楽器を使って「山の音楽家」を演奏すると、音の出ない楽器が混ざっています。そこで子どもたちは、音が出なかった笛とマラカス作りに挑戦。2種類の楽器から作りたいものを選び、模様を書いたり色をつけたりと工夫しながら制作した後、みんなで合奏も行いました。

卵パックにペットボトルのふたで作ったビーズを入れて、マラカスを作りました。

自分でできた楽器を見せてくれる子どもたち。その表情はとても満足げでした。

実習を通して、子どもたちの動きだけでなく、
メンバーとの連携の大切さを学びました。

牛乳パックやヤクルトの容器、卵パック、ペットボトルで作ったビーズなどを使って、子どもたちが自分なりに創意工夫ができる楽器作りを行いました。好みや制作にかかる時間に個人差があると思ったので、希望すれば2つとも作れるように材料の準備をしていたのですが、自分が作った楽器で夢中になって遊ぶ子どもが多く驚きました。子どもの新たな姿の発見でした。グループ実習だったので一人ひとりに対応できましたが、個人実習だったら大変だったと思います。実習を通して、子どもたちの動きだけでなく、他のメンバーとの連携の大切さが学べました。

加藤 友恵さん
加藤 友恵さん

(大麻高校出身)

年少:ももちゃんをつかって遊ぶ

あんず組

ももちゃんという人形の家に遊びに行くという設定で、ごっこ遊びを行いました。子どもたちは、ももちゃんの家に行くために2列に並んでロープの電車に乗る、ももちゃんの家で順番にフライパンやフライ返し、菜箸を使って料理を作り、そのごちそうをたべるという、2つのごっこ遊びを楽しみました。

ロープの電車で、ももちゃんの家に出発!車掌さんの後ろを2列に並んで歩きます。

お寿司ややきそば、ハンバーグなど、自分たちで作ったごはんをおいしく食べました。

一人じゃないという安心感があったので、
失敗を恐れずにチャレンジできました。

あんず組には3週間前に個人の参加実習に行っていて、そのときの子どもたちの様子を考えて日案を作成しました。ですが実習当日は、着替えや手洗いなどにかかる時間が短くなっていて、子どもの成長の早さに驚きました。大きなフライパンやコンロ、料理の品々など制作物も多く、子どもたちが譲り合うことができるのか一抹の不安を抱えていましたが、仲間が一緒だったので思い切ってチャレンジすることができ、楽しい時間を過ごしてもらえたようです。今後は子どもたちが反応しやすいよう、言葉がけを工夫していきたいと思います。

石崎 優紀子さん
石崎 優紀子さん

(啓北商業高校出身)


当日までの流れ

内容の相談
内容の相談

附属幼稚園の担当教員から、設定保育の大枠の内容が指示されます。実習生たちは5グループに分かれ、それぞれのテーマに基づき、年齢や季節に合わせて内容を考えます。その年齢の子どもにとってどんな遊びが楽しいのか、どれくらい時間がかかるかを考慮しながら、事前の準備や進行の分担など決め、先生にアドバイスをいただきながら、何度も指導案を練り直します。

附属幼稚園との打ち合わせ
附属幼稚園との打ち合わせ

一通りできあがった指導案を附属幼稚園の先生に説明し、場所や道具、全体の流れを確認しながら、さらに細かい点を詰めていきます。学生たちは、プロの目から見たアドバイスに真剣に聞き入ります。

制作物の準備
制作物の準備

実習当日に子どもたちが遊ぶ道具や、子どもが作れる程度までの下準備、環境構成の準備などの制作をします。段ボールや新聞紙、発泡トレイなど廃物や身近な素材を利用し、想像力を膨らませ、子どもが使いやすい大きさ、興味を持つ形などについて、持っている知識をフル活用して考えます。時には同じものを百個以上作ることもあります。

前日に流れを確認・リハーサル
前日に流れを確認・リハーサル

実習前日には指導案に添って、設定保育のリハーサルを行います。学生が園児役も兼ねながら、実際に話をしたり身体を動かしたりして、当日の動きを確認します。子どもの笑顔は楽しみですが、学生一人ひとりの緊張は高まります。

保育科大西道子教授

環境を通して行う指導について、
実践を通して学んでください。

保育科
大西 道子 教授

幼稚園・保育園の教育は、環境を通して「意欲・心情・態度」が育つことを基本としています。自分たちの作った指導案の基で子どもとかかわり、「保育者とは・・、子どもとは・・」を実践の中から学び取り、それをクラス全員で共有していくことが「グループ実習」の大きなねらいです。子どもは興味・関心を持った事柄に対しては、意欲的に行動します。子どもの意欲を引き出すよう、学生たちは一人ひとりの体験を持ちより計画をたて保育を実践しますが、自分たちのイメージと実際の子どもの行動には違いがあり、計画通りにはなかなか進まないものです。学生たちには、実践を通して子どもへの理解を深め、子どもの意欲を引き出す表情や言葉がけ、子どもを受容するとはどういうことか、子どもの気持ちを汲み取る体験を重ね、指導法につなげていきます。それは実習を振り返る場の中で、実践のビデオも活用し、実習した学生と観察していた学生が実習して気づけたこと、見ていて感じたことを話し合い、共有する中で次への課題として確認していくことになります。実習を通して、実践と検証を繰り返しながら、子どもの成長を促すために保育者はどう環境を工夫し、関わるべきかを学んでいくことになります。


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